Chika KATO

Tronto Clinical Training Program Reports

はじめに

はじめまして。このプログラムは、最先端の小児医療を行うオンタリオ州最大の小児病院、トロント小児病院(通称:SickKids)での現地研修を通して、海外の病院で働く薬剤師の姿、働き方、チーム医療での薬剤師の役割など様々なことを目で見て、肌で感じ、学ぶことができるプログラムです。

研修では、薬剤部の見学、薬剤師の先生方による講義、病棟業務見学、カンファレンスへの参加等をさせて頂きました。

このプログラムに参加した一員として、現地で感じたことや学んだことを書きたいと思います。

SickKids was completely different from what I had imagined!

In Japan, it's normal that doctors, nurses and pharmacists who work at hospital wear a white dress. Also, the wallpaper is usually neutral color such as white, gray and light blue color. I think Japanese hospital has a distinctive atmosphere makes people feel that they are in the hospital.

However, SickKids was speedily overturned common sense I had. The various colors wallpaper and illustrations brighten the atmosphere of the whole hospital and cheer up the patients. Pharmacists didn't wear a white dress. There was a food court and a relaxing space surrounded by many leafy plants. There was so bright atmosphere that I was tricked into thinking I was at the shopping mall.

トロント小児病院は、私が想像していた”病院”とは全く違うものでした。

日本の病院では、医師、看護師、薬剤師が白衣を着ているのは当たり前。院内のフロアや壁紙は、白やグレーなど薄い色で統一されていることが多く、”病院にいる”ということを感じさせる独特な雰囲気が漂っているように感じます。

しかし、トロント小児病院を訪れて、私の常識は早々に覆されました。院内は、様々な明るい色やイラストで溢れ、それらは病院全体を明るくし、患者さんの心も明るくしているように感じました。また、看護師や薬剤師は白衣を着ておらず普段着で、白衣を着ているのは一部の医師のみ。院内を歩いていても、医療従事者か一般の人か見分けがつかないほどでした。観葉植物に覆われた休憩スペースやフードコートがあり、ショッピングモールにいるのかと錯覚するほど明るい雰囲気でした。

薬剤師は調剤をしない?!

薬剤師といえば”調剤する人”。そのようなイメージを持っている人も多いのではないでしょうか。私もこのプログラムに参加するまでは、そのイメージをもっていた一人でした。

しかし、トロント小児病院で働く薬剤師は調剤をしていませんでした。驚きです。

では、誰が調剤するのか?それは、テクニシャンです。

トロント小児病院では、薬剤師が60人、テクニシャンが100人働いています。テクニシャンは、”紙に書かれた薬を決まった棚から取り出す”、”薬を混合する”といった作業を行うことが認められている人です。テクニシャンは誰でもなれるわけではなく研修等が必要ですが、薬剤師の資格は必要ありません。薬の取り揃えや混合はテクニシャンが行い、最後の監査は専門資格をもつ薬剤師が行っていました。すなわち、テクニシャンを活用することで、薬剤師が”作業”を行う時間を減らし、その分、病棟などへ出向き、”薬剤師にしかできない”仕事を行っているとのことでした。お話しを伺ったある薬剤師さんは「働き始めて数年になるが一度も調剤をしたことがない」とおっしゃっていたほどで、1日ずっと病棟で業務を行うことが多いそうです。

これまでは、薬剤師の仕事は”調剤”という印象がありました。しかし、この研修を通して、薬剤師の最も大切な役割は、”調剤室の外にで行う仕事”、つまり、病棟へ出向いてカンファレンスに参加し、医師や看護師をはじめとする多職種と意見を交換をしたり、最適な薬物治療の提案を積極的に行ったり、患者さんのベッドサイドで直接患者さんやそのご家族とコミュニケーションをとることであると改めて感じました。

Plans to apply my learning experience to my pharmacy education and practice in Japan

My point of view of the pharmacist was changed through my experience of this program. I had thought the main role of the pharmacist was compounding before, but I learned the most important role for clinical pharmacist was activities at clinical ward such as attendance at daily interdisciplinary bedside rounds, medication counseling through this program. Therefore, I want to communicate with other team members at the clinical ward actively and fulfill my responsibilities as a pharmacist in an interdisciplinary team when I become a pharmacist in my future. In addition, I felt strongly that I wanted to work overseas in my future! I really appreciate my teachers and my parents gave me an opportunity for having this precious experience.

このプログラムを通して…

トロント小児病院で働く薬剤師の姿に心を動かされました。

日本と異なり、薬剤師に与えられている権限が多く、薬剤師の判断で剤形・用法用量を変更し、TDMの結果を見て処方設計を行うなど、薬のことは“全て”薬剤師が任されている環境に驚きました。また、全ての調剤はテクニシャンが行い、薬剤師は皆、ほとんどの時間、病棟で業務を行う体制で、“薬剤師は薬剤師にしかできないことを行う“という働き方に魅力を感じました。

さらに、処方提案が当たり前のため、疑義照会という概念はなく、他職種と対等かつ厚い信頼関係で結ばれていることを感じてきました。何よりも薬剤師が、自分の仕事に誇りをもち、積極的に発信し、活躍している姿に感銘を受けました。

その姿を見て、薬剤師から積極的に行動を起こし、周りと関わっていく姿勢の大切さを学び、“患者さんや他職種と密にコミュニケーションをとりながら治療に携わることで発揮できる薬剤師としての役割”に興味が沸きました。将来、このプログラムで学んだことを体現できる薬剤師になれるよう頑張りたいと思います。

このような貴重な機会を与えて下さった先生方に感謝申し上げます。